〜響心〜

(あんたさ何、調子乗ってんの?)

(最近葵くんと仲良くしてるよね。)(耳聞こえないから何言ってもわかんないよね)

嘲笑うような顔をした、女子3人に囲まれていた、

(クソビッチ)(キモい)(消えてくんない?)(葵くんと関わるなよ)(何様なわけ?)


あー結局こうなる。耳は聞こえない。なにも聞こえない。


でも、何が言われたのかは想像ができる。やめよう。もう。人に期待をするのは。人を好きになるのは。


もう、いいや。


体育祭から何ヶ月も過ぎた。

あれから一回も葵と話していない。


葵の連絡先は消して、お弁当を一緒に食べに誘ってきそうになると、この間何かを言ってきた女の子達が葵の周囲を囲う。


そんな毎日だ。


それと、私のお母さんから転校の話が持ちかけられている。耳が聞こえないような子達の進学などをサポートしてくれる学校だ。受験に向けても、それがいいと私は思っている。


だから、あと少し。あと少しで何もかもが終わる。


葵への思いも、女子からの冷ややかな視線も、浮いているこの状況も。


(それでは、文化祭の出し物を決めたいと思います)


私の高校は一年生が合唱、二年生はステージ発表、三年生が屋体と決まっていて、午後からは軽音部と吹奏楽部の演奏となっている。


私にとって文化祭とは一番楽しめない行事だ。去年も文化祭には出ていない。声、音楽といったもので作り上げていく舞台など私は何もわからないのだから。