この日記は、 郡崎 秋斗くんの記憶障害を少しでも支えるために、秋斗くんの友人である春海夕凪が作ったものです。
秋斗くんは眠る前に必ずこの日記を書き、次の日の朝読み返すこと(読み返すことを指示するメモを目覚まし時計に貼っておいてね)。
すべて読み終わったら紫雲山の麓においた箱に入れておくこと。昼間に私が確認して、秋斗くんとさよならする前に書くので、それを持って帰ってまた書いてください。
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《七月二十六日 金曜日》
秋斗くん、おはようございます。
今日からこの交換日記の相手を務める、春海夕凪といいます。
今日、秋斗くんは私に自分の記憶障害のことを話してくれました。
私は驚いたけれど、納得もしました。
秋斗くんは時々変な言い方をしていたから。
「多分」をよく使うし、自分のことを知らない人のことのように話すんだよ。
私は不思議でたまらなかったけど、聞いちゃいけないんだろうなって思ってた。秋斗くんは変な言い方をするとき、すごく悲しそうな顔で話すから。
でも、今日勇気を出して私に話してくれて嬉しかったです。ありがとう。
私は絶対に忘れないからね。
秋斗くんのことも、秋斗くんと過ごした時間も。
これからはこの日記でもお話ししようね。
今日も一日、頑張りましょう。
《七月二十七日 土曜日》
夕凪ちゃん、こんにちは。
こんな僕の相手をしてくれて、ありがとう。
正直、記憶のことを話すのは怖かったみたいなんだ。
受け入れてもらえなかったらどうしよう、夕凪ちゃんが離れていったらどうしようって。
どうやら一昨日は色々考えて悩んでいたみたいだけれど、昨日の僕はすんなり話せたらしい。
夕凪ちゃんは僕より年下なのにすごいなあ。
人を安心させる不思議な力がらあるね。
僕を受け止めてくれてありがとう。
また紫雲山、登りに行こうね。
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《八月四日 日曜日》
秋斗くん、おはよう。
よく眠れたかな?
今日は久しぶりに紫雲山に登ったからね、少し疲れた様子でした。
今日と明日はしっかり休んで、また明後日に漆串公園で会おうね。
今日も一日、頑張ろう。
《八月五日 月曜日》
夕凪ちゃん、こんにちは。
今日は一日中寝ていたよ。夕凪ちゃんの言うとおり、相当疲れていたみたいだ。
明日会えるのを楽しみにしているよ。
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《八月十三日 火曜日》
秋斗くん、おはよう。
今日は秋斗くんのおうちにおじゃましました。
香菜さんが秋斗くんの子供の頃や、中学時代の写真見せてくれたよ。
今よりずっと小さくて、可愛かったなあ。
秋斗くんの昔話、またたくさん聞かせてもらおっと。
香菜さんにもよろしくお伝えください。
あと、告白してくれてありがとう・・・!
私も大好きです!
《八月十四日 水曜日》
夕凪、こんにちは。
昨日夕凪から、「呼び捨てでいいよ」と言われたそうなので、夕凪って呼んでみました。
なんだか照れるね。
夕凪も秋斗って、呼び捨てでいいからね。
あ、昨日伝えてたらごめん。
僕は今、随分と浮かれているみたいだ。
僕の昔の話なんて、本当に楽しかった?
聞いておいてつまらない、なんて言わないでほしいなあ。
母さんが、「またいつでもおいで」だって。
夕凪、よっぽど気に入られたみたいだ。良かったね。
やっぱり本当に告白したんだね、僕。
めちゃくちゃ嬉しいよ・・・。
まさか夕凪が逆告白してくれるとは思わなかったんだろうな、ページいっぱいに夕凪と話したことが嬉しそうに書いてあった。
好きだよ、夕凪。
《八月十五日 木曜日》
秋斗、おはよう。
年上なのに呼び捨てにしちゃっていいのかな・・・?
でも秋斗がいいっていったんだからね、今更なしはなしだからね!
秋斗のお母さん優しいね、また伺います、って伝えといて。
今日も一日、頑張ろうね。
大好きだよー!
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《八月二十九日 木曜日》
秋斗、おはよう。
今日は夏祭りに行きました。秋斗との初デート!
楽しかったね、屋台でたくさん遊んで、いっぱい食べて・・・
今までで一番楽しかったかもしれない!
秋斗に出会ってから、私の楽しい思い出がどんどん増えてます。
これからも思い出、増やしていこうね!
大好き!
《八月三十日 金曜日》
夕凪、こんにちは。
昨日はずいぶん楽しんでもらえたみたいで良かった。
僕も覚えていられたら良かったのにな。
だけど、僕が夕凪のことを好きだという気持ちに変わりはないからね。
大好きだ、夕凪。

