開放された。そう思ったのも束の間、右手に違和感を感じた。
「おにーさん?」
転移魔法を発動しているときに触れている物は一緒に転移す───。
「シ、シア?!」
そういう噂?は聞いたこと合ったが、すっかり油断していた。俺はシアと手を繋いでいた。そうだ、触れていたのだ。つまり一緒にテレポートしてしまった。まずいことになった。相手は第1王女だぞ?第1王女と一緒にいるなんて広まったらまずいな。
「えっと、シアは、国に戻す、こういう事でいいか?」
シアがきょとんとした顔で見つめている。
「あたし、国に帰りません。おにーさんと一緒に冒険したいです。」
キラキラした目で見られちゃ認証するしか無くなるだろ....。なんせシアは俺の妹に似ているから余計そうだ。
「そういえばおにーさんの名前聞いてませんでした。」
うんなんかもう仲間になる前提で話されている??相手は第1王女。俺は召喚者。何だよこの温度差。ラノベとかなら王女と召喚者の恋愛ストーリー____。とかあるかもしれないが、これは現実だ。信じがたいがな...。
「あ、俺の名前は蒼月レイ。まぁレイって呼んで。」
「じゃあレイ様。」
まさかこの俺が貴族に様呼びされるとは。だいたい俺はちょっと能力が優れてる勇者候補。候補人間だ。他にも剣力が優れている奴もいるだろう。
「いや俺はシアに様呼びされる筋合いはない。それに俺はシアって呼び捨てしてるわけだし、お互い呼び捨てにしないか?」
「...。じゃあ、レイおにi―――。」
「いやぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
シアがなにか言いかけた瞬間叫び声が轟いた。ラノベの異世界ものでの定番の展開だ。まぁ何を言いかけたかは後で聞けば良い。教えてくれなくたって後々分かるだろう。
「シアはそこにいろ。俺が様子を見てくる。」
「お、おにiっ.....」
とは言ったものの、武器すら持って来なければ剣術もわからない。ろくに魔法も使えやしない。どう戦えばいいかわからない。
そうこう言っていると悲鳴が聞こえた場所までたどり着いた。
「たたたたたたすけてぇぇぇぇ虫ぃぃぃぃ!!(泣)」
そこには虫に怯えてだらしなく尻餅をついて泣きわめいている少女(?)がいた。
「あー、お、お嬢さん大丈夫...?」
「大丈夫なわけ無いでしょ!!ひぃっ!!この神聖な女神に気安く触るなっ!!!(泣)」
女神。確かに彼女はそう言った。
「フラワー・エクスプロージョン!!」
「な、なんだ?!」
シアの声でそう聞こえた。と言う事はこの魔法はシアの魔法...?
「なっなによこの魔法!神聖な女神に――。」
