狐少年といじめられ少女

エピソード④ 狐妖怪《きつねようかい》との出会い

その後、私は一時間目の授業はサボってしまったものの、他の授業は全て受けた。

橋本先生と学校で出くわした時、『何でいなかったんだ?』と問い詰められた時は、体調が悪くなってしまったと嘘をついてしまった。

そして放課後。私は真っ直ぐ家には帰らず、『狐神社』と呼ばれている神社に来ていた。

ここは、パワースポットとして知られている場所だ。

「…はぁ、もう疲れちゃったな。もう死にたい…。」

小さくそう呟き、制服のスカートのポケットからカッターナイフを取り出すと、自分の手首に当てた。その時、

「おいっ、お前!!バカな事はやめろ!!」

どこからか、声が聞こえた。

ーえっ?

きょろきょろと周りを見渡す。、しかし、そこには誰もいなかった。

何だ、気のせいか…。

そう思い直し、再び手首にカッターを当てた時、

「だから!!やめろ!!」

また私を止める声が聞こえた。

「もうっ!!邪魔しないで!!というか、さっきから誰!?」

思わずそう大声を上げると、

「ここだ!!」

と返事が返ってくる。その声のした方を振り向くと、一匹の狐ー。白色で、赤色の耳の毛並みをした狐が一匹いた。

その狐は、だんだんと私の方に近寄って来る。

「きっ、狐!?で、でも狐が喋るなんて!?」

驚きのあまり、私は手に持っていたカッターナイフを落としてしまった。

「何だ?オレが喋るとおかしいか?というか、いきなりカッターナイフを落とすな!!危ないだろうが!!」

「まっ、また狐が喋った!!ばっ、化け物!!」

ひぃっとのぞけると、

「化け物とはなんだ!!化物とは!!オレは、狐の中でも位が高い狐、天狐《てんこ》という妖狐なんだぞ!!」

プンプンとその狐が怒り出す。

「てっ、天狐!?妖狐!?」

「そうだ。もっと分かりやすく言うのであれば、人間が知っている神様みたいなものだと思えばいい。というか、それよりもだ!!自分の命は大切にするんだな!!星野みずき!!」

突然、その狐が私の名前を呼ぶ。

「どっ、どうして私の名前を知っているの!?」

「お前が小学生の頃から知っている。」


驚きながらそう聞いた私に、その狐はなぜか胸(?)を張りながら自慢げにそう答えた。

「…そう。」

ふーっ。

私は息を一つつくと、その狐をじっと見つめる。