この想いが、君にバレませんように。

「はじめまして、裕の母です〜。いつも祐がありがとうねえ」

「こちらこそ、いつもお世話になってます」

そう返したのは由紀だった。「コミュ障なんだよね、私」とか言ってる割には、大人の人ともしっかり話してて、愛想が良い。多分、部長に選ばれたのはそういうのもあると思う。

それにしても、と改めて祐のお母さんを見る。祐と同じような、ぱっちりとした大きな目をしていて、華やかな顔立ちをしている。親子だから雰囲気も似てるし、祐が女の人だったらこんな感じなのかな……。

「あ、そろそろ応援合戦始まるよ」

「あらほんと! まなちゃんって何団だっけ?」

「確かねー、白だったと思うよー」

まなちゃん、って誰だろう。私たちがそう思ってると、祐がさらっと捕捉してきた。

「俺の幼なじみ。まあ今はあんまり話してないけどね。お母さんたちが仲良いから」

「あ、そうなんだ……」

去年同じクラスだったはずなのに、同じ学校だったことも、名前も、初めて知った。

「……え、まなちゃんって、もしかして去年七組だった?」

「うーん、多分? あれ、由紀さん知ってるの?」

「同じクラスだったよ」

なんだ、由紀は見たことがあるのか。

そう思うと、なんだか自分が置いていかれてるように感じた。

好きなのに、一年間ずっと一緒にいたのに、まだ知らないことがたくさんあるなんて。

それにほんの少し、寂しさを覚えた。