この想いが、君にバレませんように。

「あっつーい……」

「それなあ……」

五月の終わり。今日は体育祭で、朝から晴天だった。

この地球温暖化が進んでいる中で、外でやる運動は本当にしんどい。インドア派には修行だ、修行。

「あ、やっと見つけた」

後ろから聞こえる声に、胸がどく、と音を立てた。

平常心、平常心。ポーカーフェイスを保ちながら、私は後ろを振り向いた。

「あれ、島氏じゃん。どうしたの」

何故か喉がつっかえて声が出ないうちに、由紀が祐に話しかけた。

由紀が祐のことを「島氏」と呼ぶようになったのは、出会ってすぐの頃。男子を下の名前で呼ぶのに抵抗があった彼女に、たまにふざけて私と梓が使っていた「島氏」というあだ名を教えて以降、使うようになった。名字が島田だから、島氏。

「なんかねえ、島氏の母上が皆に挨拶したいって言ってて。もし良ければ会ってくれない?」

祐も便乗して、たまに自分のことを島氏と呼ぶ。そこが可愛いな、なんて思いつつ、私は頷いた。

「……でも、挨拶って、なんで? なんか私たちしたっけ?」

「いや多分、うちの息子がお世話になってますー的なものだと思うー」

「ああ、なるほど……」

そういえば、裕のお母さんに会うのは初めてだ。

どんな人なんだろう……祐に似てるのかな。

そう思いながら、私は二人と一緒に梓を探しに行った。