ヴーッ、とスマホが音を立てる。

始業式の直前、まだ全体がざわついている隙にちらっとスマホを見る。

メッセージがいくつか送られていて、そのうちの一つは梓からのものだった。

『え』

『待って、え、ゆいが?』

『祐のこと?? 好きなの???』

梓からのメッセージが連投で送られる。返信しようとして、やめた。始業式が始まりそうだった。

ふと辺りを見回すと、ちょっと離れたところに祐がいて、目が合った。

どくん、と心臓がなる。手を軽く振ると、向こうも軽く微笑みながら手を振ってくれた。

(……こんなに、嬉しいなんて)

祐から手を振ってもらえることが、祐と目が合うことが、祐に微笑まれることが、こんなに嬉しくて、胸がどきどきするなんて。

今朝までの自分じゃ、まるで想像できなかった。

そして、クラスが離れることも、想像できていなかった。

(……遠い、な)

祐は六組だから、隣の隣のクラス。別にそこまで遠くない。遠くない、けど。

ついさっきまで同じクラスで、隣にいた分、今はずっと遠く感じた。