ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「少しは協力したら？困ってる人に」
理香子が慶介に声をかけると慶介は顔を上げないまま返事をする。
「百聞は一見に如かず」
「あのさ、あんたって時々ものすごい古いことわざつかうよね。」
「べらべら話さなくても、短くても意味が通じる言葉だからな。何とも効率的。」
「あんたらしいわ」
理香子はすぐに再び自分の仕事に手をかけはじめた。

夕方18時。
慶介は片づけをはじめて帰宅する準備にとりかかる。
ちらりと隣に視線を向けると理香子はいつものようにまだまだ机の上に書類を出したまま、帰れる気配すらない。
なのに今も席を離れて、後輩の相談に応じているのが視線に入る。

慶介には理香子が理解できない。
見ていて時々いらいらすることもある。
もっと自分のことを優先して効率的に仕事をすれば自分の成績など理香子は簡単に抜くだろう。
でもそれをしない理香子が理解できない。