ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「もっと俺の前でわがままになってほしい。」
「・・・」
「それを俺が望んでる。理香子を知りたい。そばにいたい。分かりたい。」
慶介は泣いている理香子のほほを伝う涙に触れる。

「いいんだよ、俺は背負いたい。理香子のもってるものも。」
「・・・」
今までこんな温かな言葉を誰かにかけてもらったことなどなかった。
「俺のことも、もっと見てほしい。知ってほしい。わかってほしい。」
「・・・」
「あー早く、言いたいな~。この気持ち」
慶介はおどけて笑いながら理香子の涙をぬぐった。

「好き」
「え?」
慶介が言わないようにしていた言葉。
「大好き」
「お前、俺が言わないで我慢してた言葉を!」
目を丸くした慶介はすぐにその顔に満面の笑みを浮かべながら理香子の体を自分の方へ抱き寄せた。

「反則だろ」
「・・・だって正直になろうって決めたから。」
「・・・そっか」
「大嫌いだったのに。」
「ははっ。知ってる。」
「どんな魔法かけたのよ。」
「内緒」
「・・・気づいたら・・・いつだってあんたの顔が浮かんで・・・あんたがいないと寂しくて・・・」
理香子の声が震えだす。
涙と一緒に気持ちを言葉にして慶介に伝える。
「大好きになってた・・・。」
「うん」
「・・・怖い。」
「ん?何が怖い?」
全身に響く慶介の声に、理香子は目を閉じる。