ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「これ、助けてくんない?」
甘えた表情の慶介に理香子は微笑み、「仕方ないな」と部屋に足を踏み入れるのだった。

「こっちの部屋、使っていいから。」
簡素なベッドがあるだけの客間に慶介は理香子の荷物を置いた。

「横になる?」
「うんん。平気。」
「じゃ、家案内するな。」
「うん。」
慶介は部屋の中を案内した。
理香子が使う客間以外に、もう一部屋ある。
そこは慶介が書斎兼寝室として使っている部屋だった。
「ここは主に使ってる部屋」
理香子は部屋の中をあまり見ないように慶介の陰に隠れる。
「別にやましいもんなんてないわ。入っても、勝手に何か使ってもかまわないから。パソコンも別にパスワードとか設定してないから仕事で使ってもいいし。」
慶介が自分の部屋に呼んでくれたこと、部屋を気兼ねなく見ても大丈夫と言ってくれているところ、忙しくていろいろと乱雑になったままの部屋を見せてくれていること。
一気に慶介との距離が、慶介によって近くなれたような気がして、少し照れくさい。

「俺の一番のお気に入りの場所に案内しよう。」
無邪気な顔で微笑みながら、理香子の背中に回り慶介がある場所に誘導する。

「すごーい!」
慶介が理香子に見せたお気に入りの場所は部屋のベランダだった。

少し高台になっている場所にある慶介の部屋からは、あたりの景色が見下ろせる。
おしゃれな椅子とテーブルのセットもおかれていた。
「ほら。」
理香子を椅子に座らせると慶介は「ちょっとそのままでいて」と部屋に入る。

一人になった理香子はベランダからの景色に見とれていた。