ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「パニック発作かもしれませんね」
医師の言葉に理香子は力なくベッドに横になりながら耳を傾ける。
「パニック発作。」
「軽い熱中症の症状や、胃カメラの結果、胃の中がかなりあれた状態でいくつか潰瘍になりかけている場所も見つかりました。心の不調からきているものか、身体の不調からきているものか始まりはどちらかはわかりませんが、症状を見る限りパニック発作を起こしたと考えられます。」
慶介は医師の話を聞く自分の手がぎゅっと握られたことに気づき視線を医師から移す。

「大丈夫だ。」
ベッドに横たわる理香子が自分の手を不安そうに握りながら見つめていることに気づき、慶介はもう片方の手を理香子の手に重ねて包むようにした。

駅の医務室から救急車で病院へ運ばれた理香子。
救急隊員が到着するころには呼吸は落ち着いていたが、体力を消耗して自力で立てる状態になかった。

車で駅に来ていた慶介が車で病院へ向かい合流しようとすると、理香子は慶介の手を不安そうに握って離さなかった。

理香子が処置を受けている間も、医師が様子を見て立ち合いを許可し、ずっと理香子の手を握りそばにいる。

「まずは私たちができるのは、胃薬を処方して、脱水も見られたので点滴をすることです。あとは心療内科を紹介しますので、そちらにかかって、心のケアをすることをお勧めします。」
「・・・」
理香子の瞳から再び涙があふれる。

いつもの強気な彼女からは想像できない姿に、慶介はもう一度理香子をすぐに抱きしめたい衝動にかられる。

「日頃から無理しすぎていませんか?今はあなたの心と体が休息を求めている時かもしれませんね。少しの間、ゆっくり休憩することをおすすめします。」

年配の医師は理香子にやさしく微笑んでから病室を出た。
看護師は一晩入院をして、翌朝診察を受けて、薬を処方されてから帰宅することや、保険証や入院の手続きについて説明をしてから病室を出た。
理香子は心ここにあらずで、代わりに慶介が説明を聞く。
強気な理香子は看護師の言葉にも心ここにあらずで、ほとんど反応できずにいた。