ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

慶介が変わったことはまだある。
いつだって効率重視で、絶対に残業をしなかった慶介。
今では仕事がある程度片付いている時も理香子が社に戻るまでは帰宅せずに待つようになった。

毎日電車ではなく自分の車で出社するようになったのも、理香子があまりにも社に戻るのが遅くなった時に、車で理香子を迎えへ行き、そのまま理香子を家に送れるようにするためだった。

それぞれ一人で仕事をしていた時よりも、理香子も慶介も成績はうなぎのぼりであげていった。

二人のうわさは同じ業界内の他社でも聞かれるようになり、二人を指名する顧客も出てくるほどだった。

「片桐さん」
「はい」
定時の帰宅時間を過ぎたころ、オフィスにはほとんど人がいないなか、慶介は女性社員から声をかけられた。
「どうしました?」
明らかに面倒だという態度で返事をしながら自分の机を片付ける慶介。
「お帰りでしたか?」
「まだ帰りません」
なんとなくここで帰ると言ったらこの女性社員はついてくるような気がして、とっさに返事をする。

「あの、理香子さんのことなんですけど」
「え?」
まさかの自分ではなく理香子の話題であったことに、不意を突かれて女性社員のほうを見つめる。
「私、理香子さんに嫌われてるんです」
「はい?」
この女性社員の話は突拍子もないことばかり。
慶介はふと自分に声をかけている女性社員の方を見た。
おしゃれ重視の靴や服。
この時間まで崩れていない化粧。