ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「慶介」
「・・・はい」
「ありがとうな」
「何もしてません。」
何も向き合えないまま、父から逃げていた自分を恥じる。
認めたくなかった。

父と向き合ったら、父をもっと知ってしまったら・・・
父を許してしまいそうで怖かったことを。

「いや。感謝してる。母さんと慶介が生まれた日に一緒に話したんだ。生まれて来た奇跡を。感謝を。その気持ちはいつだって変わらなかった。」
慶介の父にとって、子供は慶介だけだった。

たくさん女性が常に周りにいたのに、子供はひとり。

「幸せになれ。」

面会は慶介の父が疲れを訴え、短時間で終了した。

病室から出た慶介は、握っていた理香子の手を離した。
「ごめん、力いれすぎた。」
少し赤くなっている理香子の手を見つめながらそっとさする。

その顔は何とも言えない哀愁が漂っている。

理香子は、慶介の正面に立ち両手を広げた。

「?」
はじめは戸惑った慶介。
しかし、ふっと力なく微笑んでから理香子の広げた手の中に入り、理香子を抱きしめた。

背の高い慶介は体を丸めるようにして、理香子の背にあわせる。