ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

ピクリと少し反応した理香子の手。すぐに熱いくらいの慶介の手に力を抜いて委ねる。
慶介は点滴のラインを直したまま理香子の手を握る。

「俺に任せるのは不安か？」
慶介の初めて聞く優しい声に、理香子の涙は止まらない。
少ししてから首を横に振る。
「じゃあ、今回は任せてほしい。なんか困ったことあったらすぐ電話するから、電話はつながるようにしといてほしい。」
「・・・」
「んで、最終日は一緒に仕事してから帰ろう。ちゃんと明日一日おとなしくしてたら、次の日は仕事してから帰ろ。」
理香子が首を縦に振れるように、慶介は妥協案を出す。

この妥協案の出し方も理香子を慶介がよく理解しているからこそのものだった。

理香子が首を縦に振ると慶介の大きな手が理香子の頭を撫でる。

「俺小さい頃、飼いたかったんだよなぁ〜。」
「………」
「大型犬」
慶介の言葉に思わず笑う理香子。

まただ。
慶介は相手が苦しい空気を、一気に変えてくれる。
そんな慶介に理香子は救われた。