ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「仕事する」
泣くのをこらえて短い言葉でつぶやく理香子。
「無理だろ。体が悲鳴上げてる。今、お前ひどい顔してるぞ？」
「・・・」
慶介の言葉に理香子は目をまるくして怒ったように頬を膨らませる。
「ごめん。」
素直に言葉の選択に間違ったことを詫びる慶介。

「いやだ・・・」
とうとう瞳から涙が溢れ出す理香子。

理香子はツヨガリだ。
甘えることをしない。
甘えられることはあっても自分から甘えたり、弱みを見せたり、しんどい時にしんどいと言えない。
言わないんじゃなくて言えないんだ。

たくさんの言葉を飲み込んで、その言葉を口から出せば誰かが大変な想いやつらい思いをするかもしれないと、あれこれ考えてすべて飲み込んで一人で背負う。

この前の駅でもそうだ。
知らん振りすればいいのに、それすらできず危険な目に自分から足を踏み込む。

理香子を電車のホームで乱暴な男から守ったのは慶介だった。

「俺はお前を心配してんの。別に俺一人でできない仕事じゃない。お前の分も俺ががんばればいい。頑張れないような仕事は俺ははじめからしない。」
慶介は泣き顔を両手で隠す理香子の手が点滴のラインに絡まないように、そっと触れる。