ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「ほら」
スーツのポケットから慶介は小さな箱を出して理香子に渡す。
「なに?」
理香子は渡された箱を見ると、それは胃薬だった。

「・・・ありがと」
昨日の帰りは理香子も慶介も終電間近まで仕事をしていた。
その時間に薬局は閉まっているはずだ。
きっと朝起きたのもギリギリだったかもしれないが、慶介はこの薬を朝一番に薬局で買ってきてくれたのだろう。
封も開いていない薬の箱に見ながら、理香子は何とも言えない気持ちになった。

「さっそく飲んじゃおうかな」
理香子は手元にあったお茶で薬を飲もうとすると、
「薬は水だろ」
と慶介は理香子がくれたコンビニの袋から水を出して渡す。
「ありがとう」
理香子が薬を飲むと、慶介はなんの躊躇もなく理香子の手から水を受けとり「のど乾いた。久しぶりにこんな走った。」とごくごくと水を飲んだ。

何も意識しないわけ?と思いながらしっかり自分が慶介を意識していると気づいた理香子は、自分の気持ちを信じられないと窓の外に視線を向けながら深いため息をついたのだった。