ツレナイ彼×ツヨガリ彼女

「もう、これ以上後悔はしたくありません。一分一秒だって私は妻のために使いたい。妻と一緒にいたい。」
「・・・」
「皆さんにはご迷惑をおかけしますが、どうか理解いただきたい。」
上司は深々と頭を下げた。

少しして頭をあげると、決心した凛々しい表情になっている。

「引継ぎは最低限にして、退職をさせていただくことになりました。25年間、ありがとうございました。」
もう一度頭を下げる上司に、誰も何も声をかけることができない。

沈黙だけが会場を包み込む。

「悪いな、歓迎会なのにこんな雰囲気にして。」
おどけたように笑いながら上司は部下たちを気遣う。
それでも誰も何も言えない。

「何ができますか?」
その沈黙を破ったのはほかの誰でもない。
慶介だった。
「え?」
意外な人物の意外な申し出にみなが注目する。