「って…そんなの当たり前だよなあ」
22時のコンビニで、ボソッと溢れた言葉がやけに響いたような気がして、慌てて周囲を見渡した。
平日、水曜。
少し離れたところで、疲れた顔したサラリーマン風の男性が、乱雑な手つきで缶ビールを手に取っている以外は、誰もいない。
私の独り言が誰にも聞かれていないことを確認して、今度はちゃんと心の中で、サラリーマン風男性にお疲れ様ですと呟いた。
…報告してくる側に100%非はないって、わかっていても。
今日が華金だったらもう少し心の余裕があったのだろうか。
「はぁ〜…」
「おっ!?結婚と妊娠報告のダブルパンチ!?」
「っ!?」
突如耳元で響いたデリカシー皆無の声に振り向くと、水曜の夜だというのになぜか爽やかな奴が立っていた。
「ちょっと!人のスマホ勝手に覗くなバカ川!!」
中川大地。
中学から現在に至るまで、なぜかずっと私の視界の隅にチラついている腐れ縁男。29才。
そして同じく29才の私は、広瀬乃亜。
四年制の大学進学の為に上京後、地元に戻って普通の会社で普通の事務員をするしがないOLである。



