○球技大会(第1話)の日の夕方・朝比奈家
雫(大変なことになってしまった………)
リビングのソファにうつ伏せになり、クッションに顔をめり込ませる雫。
雫(何年もかけて自覚した初恋相手の幼馴染が実は双子の姉を好きでした、なんて冷静に考えても意味分からない。いや、分かるけども)
柄にもなくぐでーんと溶け出しそうな雫は困り眉でため息を吐く。
雫(見た目そっくり・性格真反対な双子の片割れがライバルって、地球上で最も不利な恋愛なのでは?)
電気も付けずになにやら撃沈している娘を、帰宅した母がギョッと二度見する。
母「うわっ!つぼ、じゃなかった雫か」
雫「おかえり……」
母「そんな所で寝転がってるから蕾かと思ったわ。ほんと後ろ姿そっくりねー」
雫「蕾ちゃんはクラスの子と打ち上げだから帰るのちょっと遅くなるって……」
○同時刻・学校近くのカラオケボックス
女子生徒「それじゃあ改めまして…球技大会3位入賞を祝してかんぱーい!」
高らかな宣言とともに湧き上がる歓声で部屋中が満たされる。色とりどりのドリンクが乗るテーブルを中心としたコの字型のソファーには、10人ほどの女子生徒が肩をくっつけ合うようにして座っている。
実琴「ワンチャン優勝狙えると思ってたんだけどな~」
蕾「10クラス中3位は誇るべきだよ!」
こころ「そうね。運動部少ない割には奮闘した方じゃない?」
頬杖をつく実琴(金髪お団子ヘアのクラスの元気印)を蕾はテーブルの向かい側に身を乗り出し、手にしていたマラカスをガッツポーズを取るように上下にシャカシャカ振りながら励ます。
その横で、こころ(綺麗に切りそろえたボブカットとセンター分けの前髪が特徴の正統派美人)がクールに頷く。
こころ「それにドッヂボールで最後の1人になってテンパる蕾の図も見れたことだし」
蕾「それはもういいでしょっ!」
実琴「ほんと可愛いやつだな~つぼみんは」
実琴にほっぺたをむにむにされる蕾。周囲では歌い終えて晴れやかな顔をした友人が「すごっ!98点!?」「さすが軽音部!」と拍手喝采を送られている。モニターに次の予約曲が映し出される。
女子生徒「次だれー?」
蕾「あっ私だ」
蕾は差し出されたマイクを受け取ると、10年ほど前にリリースされたアイドルソングを歌い始める。「懐かし、この曲」「きゃーかわい~」「ファンサしてファンサー」と盛り上げる声が飛び交う。
間奏を迎えたとき、ジュースをストローですするこころが何気なく呟く。
こころ「なんか蕾の歌う曲って、基本一昔前に流行ってたのだよね」
蕾「そ、そう?」
実琴「言われてみれば確かに。小学生の時を思い出す感じの多いよな」
蕾は鋭い指摘にマイクを両手で持ったまま、ギクッと頬を引きつらせる。
女子生徒「つぼみん音楽聴くの好きって言ってなかったけ?普段どんなの聴いてるの?」
蕾「おっおすすめで流れてきたのを適当に再生してるだけだからな~」
あはははは、と冷や汗の混じった笑顔で内心の焦りを誤魔化す蕾。
蕾(……言えるわけがない)
雫(大変なことになってしまった………)
リビングのソファにうつ伏せになり、クッションに顔をめり込ませる雫。
雫(何年もかけて自覚した初恋相手の幼馴染が実は双子の姉を好きでした、なんて冷静に考えても意味分からない。いや、分かるけども)
柄にもなくぐでーんと溶け出しそうな雫は困り眉でため息を吐く。
雫(見た目そっくり・性格真反対な双子の片割れがライバルって、地球上で最も不利な恋愛なのでは?)
電気も付けずになにやら撃沈している娘を、帰宅した母がギョッと二度見する。
母「うわっ!つぼ、じゃなかった雫か」
雫「おかえり……」
母「そんな所で寝転がってるから蕾かと思ったわ。ほんと後ろ姿そっくりねー」
雫「蕾ちゃんはクラスの子と打ち上げだから帰るのちょっと遅くなるって……」
○同時刻・学校近くのカラオケボックス
女子生徒「それじゃあ改めまして…球技大会3位入賞を祝してかんぱーい!」
高らかな宣言とともに湧き上がる歓声で部屋中が満たされる。色とりどりのドリンクが乗るテーブルを中心としたコの字型のソファーには、10人ほどの女子生徒が肩をくっつけ合うようにして座っている。
実琴「ワンチャン優勝狙えると思ってたんだけどな~」
蕾「10クラス中3位は誇るべきだよ!」
こころ「そうね。運動部少ない割には奮闘した方じゃない?」
頬杖をつく実琴(金髪お団子ヘアのクラスの元気印)を蕾はテーブルの向かい側に身を乗り出し、手にしていたマラカスをガッツポーズを取るように上下にシャカシャカ振りながら励ます。
その横で、こころ(綺麗に切りそろえたボブカットとセンター分けの前髪が特徴の正統派美人)がクールに頷く。
こころ「それにドッヂボールで最後の1人になってテンパる蕾の図も見れたことだし」
蕾「それはもういいでしょっ!」
実琴「ほんと可愛いやつだな~つぼみんは」
実琴にほっぺたをむにむにされる蕾。周囲では歌い終えて晴れやかな顔をした友人が「すごっ!98点!?」「さすが軽音部!」と拍手喝采を送られている。モニターに次の予約曲が映し出される。
女子生徒「次だれー?」
蕾「あっ私だ」
蕾は差し出されたマイクを受け取ると、10年ほど前にリリースされたアイドルソングを歌い始める。「懐かし、この曲」「きゃーかわい~」「ファンサしてファンサー」と盛り上げる声が飛び交う。
間奏を迎えたとき、ジュースをストローですするこころが何気なく呟く。
こころ「なんか蕾の歌う曲って、基本一昔前に流行ってたのだよね」
蕾「そ、そう?」
実琴「言われてみれば確かに。小学生の時を思い出す感じの多いよな」
蕾は鋭い指摘にマイクを両手で持ったまま、ギクッと頬を引きつらせる。
女子生徒「つぼみん音楽聴くの好きって言ってなかったけ?普段どんなの聴いてるの?」
蕾「おっおすすめで流れてきたのを適当に再生してるだけだからな~」
あはははは、と冷や汗の混じった笑顔で内心の焦りを誤魔化す蕾。
蕾(……言えるわけがない)



