◯市民まつり当日(朝)・市営グラウンド
屋台やステージの設営が着々と進むすっきりとした秋晴れの空の下、スタッフ用Tシャツを身に纏ったボランティアの生徒達はグラウンドの隅の方へ集められる。例に漏れずひとかたまりになっている4人だが、雫は凪から距離を置くようにして数歩後ろに下がっている。
楠木「15分後に開場なんで各自なんとなーく持ち場に分かれてください」
ふと4人の方に視線をやった楠木は、ふたななじみが一体となっている状況に渋い反応を示す。
楠木「お前らはややこしいから長子組と末子組で分かれとけ」
その言葉に、雫はほっと胸を撫で下ろす。一方、歯痒い面持ちの凪に気付いた雫は意を決したように、一瞬ぎゅっと唇を結ぶ。
雫(いつも通り、いつも通り)
明の隣に並んだ雫は凪と蕾に向けて微笑む。
雫「じゃあまた後でね」
凪はそのぎこちない笑顔に、曖昧に口角を上げることしかできなかった。
◯昼前・ステージ裏
ほどなく開場し、多くの人で賑わっているまつりの目玉イベントでもあるステージ演目。華やかな衣装に身を包んだ男女のグループがダンスを披露する舞台の裏では、ステージ係に任命された凪と蕾が業務に勤しんでいる。
名簿やスケジュール表を片手に舞台袖で時間枠を管理する蕾と、順番を控えている出演者の誘導と整理を行う凪。
凪「千坂吹奏楽クラブの方はこちらに移動してください」
蕾「ちょっと時間押してるのでここを……あ、その荷物はけちゃいますね」
テキパキと仕事をこなす2人に、市の職員達は深く感心する。
スタッフ一同「高校生有能」
好評をもらうのに値する真面目さを発揮して仕事をする凪だが、やや心ここにあらずで浮かない表情が見え隠れしている。
蕾「……ぎ、なーぎっ」
その声で我に返った凪は、資料を纏めたバインダーを携えていつの間にか背後に立つ蕾を振り返る。
蕾「昼過ぎまで休憩。今日いつにも増してボーッとしてんね」
凪「気のせいだよ~」
内心の焦りを悟られまいと敢えてふんわりとした調子で返す凪。2人は揃ってステージ裏から出る。と、突然蕾の腰に勢いよく手を回す少女(小学校2年生ぐらい)が現れる。
少女「お姉ちゃーんっ!」
声の方に視線を落とした蕾の表情は怯えと驚きが混ざり合い強張っている。その微かな変化に気付く凪。蕾に抱きつく少女はハッと大きく目を見開く。
少女「お姉ちゃんじゃない……」
スタッフ「すみません!うちの妹が」
少女「お姉ちゃん!!」
姉である走ってやってきたスタッフと手をつなぎ仲睦まじく人混みの中に消えていく少女の背中を見送る、蕾は浮かない顔で呟く。
蕾「あれぐらいの頃だったな」
蕾が何のことを言っているか把握しつつも敢えて口を挟まない凪。
蕾「自分の不甲斐なさに嫌気が差して勝手に劣等感抱いて、慕ってくれてた妹にあんな言葉……」
蕾の長い睫毛が瞳に深い影を落とす。その隣で凪はそっと口を開く。
凪「『お姉ちゃんって呼ばないで』?」
そのセリフを受けた蕾は儚く笑ってみせると、すぐに深刻な面持ちに戻る。
蕾「あのときどうすればよかったのか、未だに考えてる」
物悲しく指先を弄る蕾と、蕾の言葉に自分に告白してくれたときの雫の切ない表情を思い出し押し黙る凪。その正面から、真っ直ぐに声が飛んでくる。
屋台やステージの設営が着々と進むすっきりとした秋晴れの空の下、スタッフ用Tシャツを身に纏ったボランティアの生徒達はグラウンドの隅の方へ集められる。例に漏れずひとかたまりになっている4人だが、雫は凪から距離を置くようにして数歩後ろに下がっている。
楠木「15分後に開場なんで各自なんとなーく持ち場に分かれてください」
ふと4人の方に視線をやった楠木は、ふたななじみが一体となっている状況に渋い反応を示す。
楠木「お前らはややこしいから長子組と末子組で分かれとけ」
その言葉に、雫はほっと胸を撫で下ろす。一方、歯痒い面持ちの凪に気付いた雫は意を決したように、一瞬ぎゅっと唇を結ぶ。
雫(いつも通り、いつも通り)
明の隣に並んだ雫は凪と蕾に向けて微笑む。
雫「じゃあまた後でね」
凪はそのぎこちない笑顔に、曖昧に口角を上げることしかできなかった。
◯昼前・ステージ裏
ほどなく開場し、多くの人で賑わっているまつりの目玉イベントでもあるステージ演目。華やかな衣装に身を包んだ男女のグループがダンスを披露する舞台の裏では、ステージ係に任命された凪と蕾が業務に勤しんでいる。
名簿やスケジュール表を片手に舞台袖で時間枠を管理する蕾と、順番を控えている出演者の誘導と整理を行う凪。
凪「千坂吹奏楽クラブの方はこちらに移動してください」
蕾「ちょっと時間押してるのでここを……あ、その荷物はけちゃいますね」
テキパキと仕事をこなす2人に、市の職員達は深く感心する。
スタッフ一同「高校生有能」
好評をもらうのに値する真面目さを発揮して仕事をする凪だが、やや心ここにあらずで浮かない表情が見え隠れしている。
蕾「……ぎ、なーぎっ」
その声で我に返った凪は、資料を纏めたバインダーを携えていつの間にか背後に立つ蕾を振り返る。
蕾「昼過ぎまで休憩。今日いつにも増してボーッとしてんね」
凪「気のせいだよ~」
内心の焦りを悟られまいと敢えてふんわりとした調子で返す凪。2人は揃ってステージ裏から出る。と、突然蕾の腰に勢いよく手を回す少女(小学校2年生ぐらい)が現れる。
少女「お姉ちゃーんっ!」
声の方に視線を落とした蕾の表情は怯えと驚きが混ざり合い強張っている。その微かな変化に気付く凪。蕾に抱きつく少女はハッと大きく目を見開く。
少女「お姉ちゃんじゃない……」
スタッフ「すみません!うちの妹が」
少女「お姉ちゃん!!」
姉である走ってやってきたスタッフと手をつなぎ仲睦まじく人混みの中に消えていく少女の背中を見送る、蕾は浮かない顔で呟く。
蕾「あれぐらいの頃だったな」
蕾が何のことを言っているか把握しつつも敢えて口を挟まない凪。
蕾「自分の不甲斐なさに嫌気が差して勝手に劣等感抱いて、慕ってくれてた妹にあんな言葉……」
蕾の長い睫毛が瞳に深い影を落とす。その隣で凪はそっと口を開く。
凪「『お姉ちゃんって呼ばないで』?」
そのセリフを受けた蕾は儚く笑ってみせると、すぐに深刻な面持ちに戻る。
蕾「あのときどうすればよかったのか、未だに考えてる」
物悲しく指先を弄る蕾と、蕾の言葉に自分に告白してくれたときの雫の切ない表情を思い出し押し黙る凪。その正面から、真っ直ぐに声が飛んでくる。



