◯数十分後、2年7組の教室
凪と雫以外誰も居なくなった教室に、紙を纏めたりペンで書き留めたりする音がやけに響く。
雫(こんなの完全に誤算だよお)
教室の真ん中で凪と机を向かい合わせて会計事務をこなす雫は困り眉になって内心嘆く。
気まずさを隠しきれていない雫は視線を泳がせる。頑なに自分の方を見ようとしない幼馴染に、凪は「しずく」と名前を呼びながらポケットから取り出したある物を差し出す。
レシートを確認する手元に突然現れた駄菓子の当たり券に、雫は思わず目線を上げる。
雫「これ……」
凪「この前一緒に買った駄菓子。当たったんだ〜」
雫「わあっすごーい」
凪の目を見て素直に感激する雫。その明るい表情に、凪は安心したようにふっと頬を緩める。
凪「よかった。やっとこっち見た」
雫「あ」
凪「ここ数日、俺のこと避けてたでしょ」
雫「うっ」
痛いところを突かれてみるみる萎んでいく雫を、凪は特に責めるでもなく柔らかく見つめる。
凪「ずっと暗い顔してるし挙動不審だし、何かあったのかなって。だからこれ」
凪は再度当たりくじをずずいっと雫の方へ押し近づける。
凪「ラッキーのお裾分け。きっといいこと起こるよっていうおまじない」
無邪気な笑顔に、雫は俯きがちに密かに小さく口を動かす。
雫「ずるいなあ……」
当たり券をきゅっと大事そうに握った雫は不器用に微笑む。
雫「ありがとう。大事にするね」
ほんわかした空気を醸し出す雫だが、まだどことなく切なく歪んだ表情をしている。それに聡く気付いた凪は、不満げに唇をツンと尖らせながら顔を雫に近付ける。
凪「絶対なにか悩んでるよね」
雫「しょっそんなことないヨ?」
妙に鋭い指摘にダラダラと冷や汗を垂らす雫。凪は急にピシッと姿勢を整えて「これはひとりごとなんだけどっ」と声を張る。
凪「正直体よく仕事押し付けないでくれって思う!帰宅部なのを良いことにっ。別に俺だって暇人じゃないんだしいきなり週末に予定が増えたこっちの身にもなってよ!!」
慣れない様子で文句を捲し立てる凪に雫は呆気にとられる。動揺全開の雫に、凪は気を取り直したようにコホンと1つ咳払いをする。
凪「と、いうようにたまには胸の内をさらけ出してみてはというご提案」
雫「て、提案?」
凪「しずくすぐに溜め込むから。あくまでもひとりごとなんだし。俺がたまたま近くにいるってだけで」
久しぶりに見たふんわり優しい笑顔に、雫は今にも泣き出しそうに口を歪める。凪は椅子から立ち上がると、中庭が望める窓を開けて立派に花を付ける木(金木犀)に「金木犀だ。綺麗~」と見惚れる。
そんな凪とは対照的に座ったまま俯く雫は、堪えきれなかった心の声が思わず漏れてしまったという風に震える声で呟く。
凪と雫以外誰も居なくなった教室に、紙を纏めたりペンで書き留めたりする音がやけに響く。
雫(こんなの完全に誤算だよお)
教室の真ん中で凪と机を向かい合わせて会計事務をこなす雫は困り眉になって内心嘆く。
気まずさを隠しきれていない雫は視線を泳がせる。頑なに自分の方を見ようとしない幼馴染に、凪は「しずく」と名前を呼びながらポケットから取り出したある物を差し出す。
レシートを確認する手元に突然現れた駄菓子の当たり券に、雫は思わず目線を上げる。
雫「これ……」
凪「この前一緒に買った駄菓子。当たったんだ〜」
雫「わあっすごーい」
凪の目を見て素直に感激する雫。その明るい表情に、凪は安心したようにふっと頬を緩める。
凪「よかった。やっとこっち見た」
雫「あ」
凪「ここ数日、俺のこと避けてたでしょ」
雫「うっ」
痛いところを突かれてみるみる萎んでいく雫を、凪は特に責めるでもなく柔らかく見つめる。
凪「ずっと暗い顔してるし挙動不審だし、何かあったのかなって。だからこれ」
凪は再度当たりくじをずずいっと雫の方へ押し近づける。
凪「ラッキーのお裾分け。きっといいこと起こるよっていうおまじない」
無邪気な笑顔に、雫は俯きがちに密かに小さく口を動かす。
雫「ずるいなあ……」
当たり券をきゅっと大事そうに握った雫は不器用に微笑む。
雫「ありがとう。大事にするね」
ほんわかした空気を醸し出す雫だが、まだどことなく切なく歪んだ表情をしている。それに聡く気付いた凪は、不満げに唇をツンと尖らせながら顔を雫に近付ける。
凪「絶対なにか悩んでるよね」
雫「しょっそんなことないヨ?」
妙に鋭い指摘にダラダラと冷や汗を垂らす雫。凪は急にピシッと姿勢を整えて「これはひとりごとなんだけどっ」と声を張る。
凪「正直体よく仕事押し付けないでくれって思う!帰宅部なのを良いことにっ。別に俺だって暇人じゃないんだしいきなり週末に予定が増えたこっちの身にもなってよ!!」
慣れない様子で文句を捲し立てる凪に雫は呆気にとられる。動揺全開の雫に、凪は気を取り直したようにコホンと1つ咳払いをする。
凪「と、いうようにたまには胸の内をさらけ出してみてはというご提案」
雫「て、提案?」
凪「しずくすぐに溜め込むから。あくまでもひとりごとなんだし。俺がたまたま近くにいるってだけで」
久しぶりに見たふんわり優しい笑顔に、雫は今にも泣き出しそうに口を歪める。凪は椅子から立ち上がると、中庭が望める窓を開けて立派に花を付ける木(金木犀)に「金木犀だ。綺麗~」と見惚れる。
そんな凪とは対照的に座ったまま俯く雫は、堪えきれなかった心の声が思わず漏れてしまったという風に震える声で呟く。



