◯4話の翌週の平日・職員室
教員用の椅子に座った担任の楠木(若手の割に哀愁を漂わせている。身長が185センチぐらいでかなり高い)の前に明がケロリとした面持ちで立っている。
楠木「なんで呼び出されたかわかるか?」
明「皆目検討がつかないとはこのことかって感じ」
楠木「えらい自信だな」
明「だって全教科赤点回避したじゃん!提出物もコンプリートしたじゃん!!修学旅行にだって行けるじゃん!!!」
楠木「じゃんじゃんうるせーよ」
耳を塞ぎながら楠木は明の額にB6サイズの紙を1枚ペタンと貼り付ける。
明「……進路希望調査票ぅ?」
楠木「何そのフレッシュな反応。言っとくけど優木だけだからな、うちのクラスでまだ出してないの」
明「うえー」
あからさまに面倒くさそうな顔をする明はだらーんと脱力して天井を仰ぐ。
明「もう進路の話とか……まだ思う存分高校生謳歌してぇよお」
楠木「まあそりゃあなあ」
苦笑いを浮かべる楠木は、ふと壁に貼られているポスターに目を向ける。と、同時に妙案を思いついた先生は企み顔をする。
楠木「そんな迷える子羊にとっておきの青春をあげよう」
◯放課後・グラウンド脇
明「話が違うっっ!!!!」
校舎とグラウンドの間に位置するコンクリートの地面にあぐらをかく明は絵筆を放りだして、目の前に立つ楠木に抗議する。原仲、矢巻も一緒に囲んで色塗り中の大型看板には『第69回千坂市市民まつり』という文字がデカデカと施されている。
明「市民まつりのボランティアなんて聞いてない!騙された!!」
楠木「言質はとったからな」
必死の叫びをどこ吹く風で躱す楠木に、明は悔しそうに歯を食いしばり筆を握りなおす。その隣で手伝いをしている矢巻と原仲が仕方なさそうに声を上げる。
矢巻「当日以外に準備で時間取られるから毎年不人気なんですよね」
原仲「どうせなら普通にまつり回りたいもんな」
楠木「10日後開催だってのに定員割れしてたから、危うく担当の僕が責任負わされるとこだった…」
明「別に俺じゃなくてもよかったじゃん!!」
どうでもいい理由で巻き込まれたことを知った明が再度目をひん剥く。そんな明に楠木が「そりゃあお前…」と口を開いたその時、校舎の窓から蕾と雫が顔を出す。
蕾「お、やってるね~」
雫「ペンキの予備持ってきたよ」
明「さんきゅー」
『まつり用』とマジックで記された段ボール箱を抱えた2人の登場に明は顔を上げて応える。そのとき、グラウンド側から凪が小走りでやって来る。
凪「めいープラスドライバー多めに持ってってない~?」
看板製作の所に到達した凪は、校舎から顔を覗かせる幼馴染2人の姿に「つぼみとしずくだ」と反応する。しかし、雫はどことなく気まずそうに視線を逸らす。その態度に違和感を覚える凪。
その光景を傍観する楠木は満足気に呟く。
先生「1人誘ったらもれなく3人ついてくるのありがたい」
原仲「ほんと仲良いっすよね~ふたななじみ」
凪「あっ、楠木先生。さっき設営担当が探してましたよ。あっちの方の…」
一緒に姿を消していく凪と楠木。それに続くように雫が「私達もそろそろ…」と蕾に声をかける。
当の蕾はというと、いつの間にか明の前髪をちょんまげヘアにしていた。器用に縛り上げられた前髪が果物のヘタのようにちょんと跳ねている完成形を得意げに眺める蕾。
蕾「できたっ!!」
明「またコイツは人様の御髪を勝手にいじって」
蕾「かわいいかわいい」
明「別にかわいさ求めてねーんだわ」
パシャパシャとスマホのカメラに明の姿を納めてから持ち場に戻っていく蕾と雫。2人の背中を見送ってから、原仲が大真面目な顔で切り込む。
教員用の椅子に座った担任の楠木(若手の割に哀愁を漂わせている。身長が185センチぐらいでかなり高い)の前に明がケロリとした面持ちで立っている。
楠木「なんで呼び出されたかわかるか?」
明「皆目検討がつかないとはこのことかって感じ」
楠木「えらい自信だな」
明「だって全教科赤点回避したじゃん!提出物もコンプリートしたじゃん!!修学旅行にだって行けるじゃん!!!」
楠木「じゃんじゃんうるせーよ」
耳を塞ぎながら楠木は明の額にB6サイズの紙を1枚ペタンと貼り付ける。
明「……進路希望調査票ぅ?」
楠木「何そのフレッシュな反応。言っとくけど優木だけだからな、うちのクラスでまだ出してないの」
明「うえー」
あからさまに面倒くさそうな顔をする明はだらーんと脱力して天井を仰ぐ。
明「もう進路の話とか……まだ思う存分高校生謳歌してぇよお」
楠木「まあそりゃあなあ」
苦笑いを浮かべる楠木は、ふと壁に貼られているポスターに目を向ける。と、同時に妙案を思いついた先生は企み顔をする。
楠木「そんな迷える子羊にとっておきの青春をあげよう」
◯放課後・グラウンド脇
明「話が違うっっ!!!!」
校舎とグラウンドの間に位置するコンクリートの地面にあぐらをかく明は絵筆を放りだして、目の前に立つ楠木に抗議する。原仲、矢巻も一緒に囲んで色塗り中の大型看板には『第69回千坂市市民まつり』という文字がデカデカと施されている。
明「市民まつりのボランティアなんて聞いてない!騙された!!」
楠木「言質はとったからな」
必死の叫びをどこ吹く風で躱す楠木に、明は悔しそうに歯を食いしばり筆を握りなおす。その隣で手伝いをしている矢巻と原仲が仕方なさそうに声を上げる。
矢巻「当日以外に準備で時間取られるから毎年不人気なんですよね」
原仲「どうせなら普通にまつり回りたいもんな」
楠木「10日後開催だってのに定員割れしてたから、危うく担当の僕が責任負わされるとこだった…」
明「別に俺じゃなくてもよかったじゃん!!」
どうでもいい理由で巻き込まれたことを知った明が再度目をひん剥く。そんな明に楠木が「そりゃあお前…」と口を開いたその時、校舎の窓から蕾と雫が顔を出す。
蕾「お、やってるね~」
雫「ペンキの予備持ってきたよ」
明「さんきゅー」
『まつり用』とマジックで記された段ボール箱を抱えた2人の登場に明は顔を上げて応える。そのとき、グラウンド側から凪が小走りでやって来る。
凪「めいープラスドライバー多めに持ってってない~?」
看板製作の所に到達した凪は、校舎から顔を覗かせる幼馴染2人の姿に「つぼみとしずくだ」と反応する。しかし、雫はどことなく気まずそうに視線を逸らす。その態度に違和感を覚える凪。
その光景を傍観する楠木は満足気に呟く。
先生「1人誘ったらもれなく3人ついてくるのありがたい」
原仲「ほんと仲良いっすよね~ふたななじみ」
凪「あっ、楠木先生。さっき設営担当が探してましたよ。あっちの方の…」
一緒に姿を消していく凪と楠木。それに続くように雫が「私達もそろそろ…」と蕾に声をかける。
当の蕾はというと、いつの間にか明の前髪をちょんまげヘアにしていた。器用に縛り上げられた前髪が果物のヘタのようにちょんと跳ねている完成形を得意げに眺める蕾。
蕾「できたっ!!」
明「またコイツは人様の御髪を勝手にいじって」
蕾「かわいいかわいい」
明「別にかわいさ求めてねーんだわ」
パシャパシャとスマホのカメラに明の姿を納めてから持ち場に戻っていく蕾と雫。2人の背中を見送ってから、原仲が大真面目な顔で切り込む。



