わきあいあいとした空気の向かいで着々と学習を進めていく雫は、ふと手を止めて周囲の教材をきょろきょろと見回す。
雫(あれ、英語Rの授業プリントがない。学校に忘れたのかな)
雫「ねぇなぎく……」
同じクラスの凪に貸してもらおうと隣を見上げた雫は、首を斜め上に傾けたまま静かに息を呑む。凪の密やかな視線の先には、明との勉強中に困り眉になったり笑い転げたり閃いて目を輝かせたり…と愉快に表情を七変化させる蕾の姿が。
頬杖を突いた手で覆われていても伝わるほのかに緩んだ口元が、心底愛おしそうに細められた瞳が、凪の淡い恋心を物語っている。
そう悟った瞬間、雫は無意識に凪のシャツの袖口を小さくつまんで引き寄せる。切なさと必死さの入り混じった胸が締め付けられる面持ちの雫と、かすかに驚きをたたえた凪の視線が空中で交差する。
雫「……ここに、いるよ」
雫(わざわざ顔を上げなくったって、あなたのことを好きな子がこんなにそばにいるんだよ)
ややかすれながらも絞り出した2人にしか聞こえない言葉の真意を計りかね、俯く雫を見つめたまま凪は固まる。その時、「あらあら~」とおっとりとした声が舞う。
優木母「来てくれて嬉しいわ~蕾ちゃん雫ちゃん」
蕾「お邪魔してますー」
雫「と、突然ごめんなさいっ」
優木母「いいのいいの、明のためにありがとうね」
凪を彷彿とさせる温厚な微笑みを浮かべて帰宅した母は、エコバッグをキッチンに置くとうっとりと食卓に目をやる。
優木母「女の子がいると空気が華やぐわね~フローラルの香りって感じ」
明「言われてんぞ、脳内お花畑女」
蕾「一回自分の頭の中覗いてみ?それはそれはさぞかし立派な花園が広がっていることでしょうよ」
たくさんの花に埋め尽くされるように囲まれている明の姿を想像する凪と雫。と、冷蔵庫の整理をする優木母が突然ハッと息を呑む。
優木母「あらま、卵買い忘れちゃったわ」
凪「オムライスなのに!?」
優木母「ケチャップもないわ、どうしましょう」
明「オムライスなのに!?」
通常運転で天然な行動を連発する母に揃ってツッコむ息子達。不思議そうにエコバッグの中を覗き込む優木母を見て、雫と蕾は同じことを考える。
雫・蕾(長男の天然は母譲りなんだなあ)
2人がしみじみとしている中、凪がスッと腰を上げる。
凪「俺買ってくるよ」
明「それなら俺が!」
勢いよく椅子を鳴らす明。母にお金を渡されながら凪はくるりと振り向き、例の目だけが笑っていない笑顔を浮かべる。
凪「明は勉強してて?お願いだから、ほんとに」
明「……ですよねェ~」
しゅんと項垂れながら腰を下ろしなおす明。その正面で雫が物申したそうに1人で口をパクパクさせていると蕾が手を真っ直ぐ上げる。
蕾「私も行く」
雫(あれ、英語Rの授業プリントがない。学校に忘れたのかな)
雫「ねぇなぎく……」
同じクラスの凪に貸してもらおうと隣を見上げた雫は、首を斜め上に傾けたまま静かに息を呑む。凪の密やかな視線の先には、明との勉強中に困り眉になったり笑い転げたり閃いて目を輝かせたり…と愉快に表情を七変化させる蕾の姿が。
頬杖を突いた手で覆われていても伝わるほのかに緩んだ口元が、心底愛おしそうに細められた瞳が、凪の淡い恋心を物語っている。
そう悟った瞬間、雫は無意識に凪のシャツの袖口を小さくつまんで引き寄せる。切なさと必死さの入り混じった胸が締め付けられる面持ちの雫と、かすかに驚きをたたえた凪の視線が空中で交差する。
雫「……ここに、いるよ」
雫(わざわざ顔を上げなくったって、あなたのことを好きな子がこんなにそばにいるんだよ)
ややかすれながらも絞り出した2人にしか聞こえない言葉の真意を計りかね、俯く雫を見つめたまま凪は固まる。その時、「あらあら~」とおっとりとした声が舞う。
優木母「来てくれて嬉しいわ~蕾ちゃん雫ちゃん」
蕾「お邪魔してますー」
雫「と、突然ごめんなさいっ」
優木母「いいのいいの、明のためにありがとうね」
凪を彷彿とさせる温厚な微笑みを浮かべて帰宅した母は、エコバッグをキッチンに置くとうっとりと食卓に目をやる。
優木母「女の子がいると空気が華やぐわね~フローラルの香りって感じ」
明「言われてんぞ、脳内お花畑女」
蕾「一回自分の頭の中覗いてみ?それはそれはさぞかし立派な花園が広がっていることでしょうよ」
たくさんの花に埋め尽くされるように囲まれている明の姿を想像する凪と雫。と、冷蔵庫の整理をする優木母が突然ハッと息を呑む。
優木母「あらま、卵買い忘れちゃったわ」
凪「オムライスなのに!?」
優木母「ケチャップもないわ、どうしましょう」
明「オムライスなのに!?」
通常運転で天然な行動を連発する母に揃ってツッコむ息子達。不思議そうにエコバッグの中を覗き込む優木母を見て、雫と蕾は同じことを考える。
雫・蕾(長男の天然は母譲りなんだなあ)
2人がしみじみとしている中、凪がスッと腰を上げる。
凪「俺買ってくるよ」
明「それなら俺が!」
勢いよく椅子を鳴らす明。母にお金を渡されながら凪はくるりと振り向き、例の目だけが笑っていない笑顔を浮かべる。
凪「明は勉強してて?お願いだから、ほんとに」
明「……ですよねェ~」
しゅんと項垂れながら腰を下ろしなおす明。その正面で雫が物申したそうに1人で口をパクパクさせていると蕾が手を真っ直ぐ上げる。
蕾「私も行く」



