「吹田さん、行く場所がないなら、うちに来ますか?」
「えっ?」
「独り者同士、同じ悲しみを味わってきた者同士で、一緒に生活しませんか?」
「で、でも、、、わたしなんかが行ったら、迷惑じゃ、、、」
「迷惑だったら、こんな提案していませんよ。あなたを、、、一人にしておけません。」
上谷先生はそう言うと優しく微笑み、わたしはその優しさについ頷いてしまった。
「じゃあ、病院側には僕から説明しておきますね。退院予定はいつですか?」
「あと、1週間後くらいです。」
「分かりました。じゃあ、その時に迎えに来ますね。」
明人の両親に責められてから、人間不信になったわたしが、なぜまだ2回しか会ったことない男性と一緒に生活することを決めてしまったのか。
それはイコール、わたしが生きる選択をしたことを意味する。
死にたくて仕方なかったのに、、、何でだろう。
上谷先生は「じゃあ、また来ますね。」と言うと、手を振って病室をあとにした。
その日の夕食、わたしは入院してから初めて病院食に手を付けた。
少しだけ食べてみようかな、という気持ちになったのだ。
決して美味しいとは言えない病院食。
しかし、少しでも食べれたことに看護士さんたちは褒めてくれた。
"食べる"という当たり前のことすら放棄していたわたしの、生きる第一歩な気がした。



