涙の向こう側


「情けなくなんか無いですよ。大切な人の名前じゃないですか。」

わたしがそう言うと、優作さんは顔を上げ、朝日を見つめながら「人って、、、弱い生き物ですよね。」と独り言のように呟いた。

「強くあろうとすればする程、自分の弱さを実感してしまう、、、。自分が情けなくて、嫌いになりそうです。」
「、、、人間って弱い生き物なんですよ。でも、誰かと一緒に居ると強くなれる気になりません?大切な人が居ると、頑張らなきゃって自分を奮い立たせられるし、自分がダメになりそうな時は相手が支えてくれて、、、愛する人がいると、強くなれる気がします。」

わたしがそう言うと、優作さんは少しだけ笑って、「ふみかが、笑莉さんと同じことを言っていました。」と言った。

「えっ?奥様が?」
「はい。人間は弱い生き物だ。だから、人間はこんなにもたくさん存在していて、その中から愛する者を見つける。一緒に居て、支えて支えられる存在を。愛する人がいるから頑張れる。でも弱気になった時は、愛する人がいるから甘えられる。だから、その為にわたしが居るんでしょ?って。」

優作さんはそう言って、朝日の光を浴び、少しだけ微笑んだ。

「妻の言葉を思い出せて、元気が出てきました。笑莉さん、思い出させてくれてありがとうございます。」

そう言って、優作さんは珈琲を飲み、朝日を見つめていた。

「今日は新規の患者さんもカウンセリングもないので、笑莉さんはゆっくり休んでてくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」

優作さんは本当に奥様を、ふみかさんを愛していたんだなぁ。

だからこそ、失った悲しみは深くて、わたしも明人を失った自分の悲しみと重ね合わせ、なぜか優作さんを抱きしめてあげたい気持ちになった。