涙の向こう側


その後、リビングのソファーに戻り眠りについたわたしだったが、まだ薄暗い内に目が覚めてしまった。

しかし、少し外が明るくなってきている。

壁掛け時計を見てみると、時刻は4時16分だった。

すると、またベランダのカーテンの隙間に人影があることに気付いた。

きっと優作さんだ。

わたしはケトルでお湯を沸かすと、自分用にココアを淹れ、ベランダへと向かった。

「おはようございます。」

わたしがそう声を掛けると、両手でマグカップを持ち、ベランダの柵に腕を乗せながら、顔を覗かせ始めていた朝日を眺めていた優作さんがこちらを向いた。

「あ、笑莉さん。おはようございます。早いですね。」
「優作さんこそ。」

そう言って、わたしは優作さんの隣に並んだ。

「笑莉さんも珈琲ですか?」
「いえ、わたしはココアです。珈琲は、ちょっと苦手で。」
「ココアいいですね。妻も珈琲が苦手でココアを飲んでいました。」
「ふみかさん、ですか?」

わたしの言葉に驚く優作さんは、「どうして、妻の名前を?」と言った。

「あ、ごめんなさい、、、。昨日、、、優作さんが寝言で"ふみか"と言っていたので、、、奥様の名前かなって、、、」
「俺が寝言でふみかの名前を?」

優作さんはそう言い、鼻で笑うと「恥ずかしいですね。情けない、、、」と顔を下に向けた。