涙の向こう側


「書き終わりました。」
「はい、ありがとうございます。」

わたしは小倉さんが書いた問診表を受け取ると、目を通した。

問診表には、心や身体に出ている症状にチェックを付ける項目があり、小倉さんはほとんどの項目にチェックが付けていた。

そして症状を自覚し始めたのは、約1ヵ月前と書かれていた。

「体調結構悪そうですね、、、症状を自覚されたのは1ヵ月前くらいと書かれていますが、原因は何かご自分で心当たりはありますか?」

わたしがそう訊くと、小倉さんはゆっくりと話し始めた。

「わたし、、、シングルマザーで、子どもが1人いるんですけど、、、働きながら子どもと2人暮らしをしていて、、、。」

小倉さんの声震えていた。
そして、話しながら次第に目を潤ませ、話を続けてくれた。

「まだ子どもが小さいので、保育園でよく風邪をもらってきて、保育園から熱が出たのでお迎えお願いしますって、、、電話がかかってくるんですけど、、、その度に早退したり、仕事も休まなきゃいけなかったりで、、、職場の人に頭下げてばかりで、、、。子ども身体弱いんじゃない?って言われたり、、、仕事休みたいから嘘ついてるんじゃないの?とか、、、言われたりして、、、」

泣きながらそう話す小倉さんは涙を拭いながら、必死に話してくれた。

わたしは小倉さんにティッシュを差し出すと、「そんな酷いこと言う人いるんですか?」と言った。

「はい、、、。最近は仕事に行く前になると吐き気がしたり、動悸がしたりするようになって、、、仕事中も目眩したりするんですけど、わたしが働かないと子どもを育てていけないし、、、」
「ご実家の方は頼れる環境ではないんですか?」
「実家は遠方なので、なかなか頼れないんです。それに、母とは性格が合わなくて、、、それもあって、頼りたくないというか、、、」

わたしはメモを取りながら、小倉さんの話に耳を傾け、「頼れるところがないのはツライですね、、、。」と言うと、小倉さんは頷きながら涙を流し続けた。