涙の向こう側


わたしはシャワーを簡単に済ませ、着替えてリビングに戻った。

するとソファーに座っていた上谷先生がわたしを見た時の表情が一瞬、ハッとしていたのだ。

そして、上谷先生は優しく微笑み「疲れたでしょ?ほら、ソファーでゆっくりしてて?俺もシャワーを浴びて来るよ。」と言った。

上谷先生は堪えて隠しているつもりだっただろうが、わたしには見えた。

隠そうとしていた、薄っすらと瞳に浮かんだ涙が。

きっと、奥様の服を見て思い出してしまったんだろうなぁ。

わたしは、上谷先生がシャワーを浴びに行った後、ここに来た時から気付いていた奥様であろう棚の上に飾ってある女性の写真をそばまで見に行った。

綺麗な人、、、

一緒に写っている上谷先生、、、こんな素敵に笑う人なんだなぁ。

わたしが見る上谷先生の笑顔や微笑みは、いつもどこか切なげで悲しみが滲み出ている。

5年経ったとはいえ、大切な人を亡くした悲しみは消えないし、薄れることもない。

上谷先生は、わたしを生きる道へと導いてくれたけど、、、自分自身も生きることに余裕なんてないんだろうなぁ。

そう見せないようにしているだけで、きっと心の中ではまだ泣いている。

わたしは、そう思えて仕方がなかった。