「あ、もちろん給料は払うからね!」
「いえいえ!逆にお給料もらうなんて申し訳ないくらいです!入院費、、、払っていただいたのに、、、」
「それはそれ、これはこれ。それに、退去しなきゃいけない家の滞納してる家賃払わなきゃいけないでしょ?だから、ねっ?」
恥ずかしい話だが、確かにそうだ。
わたしは上谷先生の言葉に渋々頷くと、上谷先生は嬉しそうに「じゃあ、決まりだね!」と言った。
それから上谷先生は「お風呂どうする?湯船に浸かりたい?シャワーで済ませたい?」と訊いた。
上谷先生はさすが心療内科医だけあって分かっているのだ。
わたしみたいに心が砕けた人間がお風呂に入るという行為すら、面倒でエネルギー消費が激しい事を。
わたしは「シャワーで大丈夫です。」と答えた。
「じゃあ、シャワー浴びておいで。入院中もシャワーは3日置きとかだったでしょ?」
「はい、、、」
「シャワーだけでも疲れちゃうよね。あ、着替えどうしようか、、、。もし嫌じゃなければだけど、、、妻が使ってた服使うかい?体型同じくらいだから、着れると思うんだけど。」
「わたしは気にしませんが、逆に先生が嫌じゃないですか?大切な奥様の服を、、、わたしなんかが着るなんて。」
わたしがそう訊くと、上谷先生は少し切なげに微笑み「妻の服はどうしても捨てられなくてね。着てもらえた方が服が喜ぶと思う。」と言った。
上谷先生がそう言ってくださったので、複雑な気持ちではあったが、着替えもないわたしは奥様の服を借りて着ることにした。
「好きなの着て良いよ。」と言われ、タンスを開けてみると、奥様の服は綺麗な状態で残っていた。
今もまだ使っているのではないかという程に。
5年経ってこんな綺麗なら、きっと定期的に服の手入れをしているんだろうなぁ、、、
そう思うと、上谷先生の奥様への愛情が垣間見えた感じがして、胸がグッと苦しく切なくなった。



