誰よりも、愛してる

 それを聞いた虎太郎は、

「そうだな、俺らなら恋愛に発展する事もねぇから楽だしな。それじゃあするか、恋人のフリ」

 私の冗談を真に受けて、恋人のフリをしようと言った。

 私がいけないんだ、冗談でもそんな事を言ったから。

 だけど、いざ虎太郎の口からその言葉が出ると、胸がチクリと痛み出した。

 嫌だけど、今更冗談だなんて言えなかった私は、

「感謝してよね? 私くらいなものだよ? そんな事に付き合えるの」

 こうなったら、とことん虎太郎に合わせるしかない。

 そう割り切った私は何でもないような素振りで虎太郎の偽の彼女になる事を了承した。

「感謝してる。つーか、ずっとって訳にはいかねぇよな? とりあえず、どっちかに好きな奴が出来るまでとかにする?」
「え? あ、うん。まあ、私はそんな人出来ないと思うけど……何? 虎太郎は好きな人出来そうなわけ?」
「いや、そんな予定ないけど」
「それじゃあ、ずっと恋人のフリしなきゃならないね?」
「かもな」

 虎太郎の口から『好きな人』なんてワードが出て来たから一瞬ドキッとしたけど、今のところそういう人はいないらしい。

(……虎太郎にとって、私はそういう対象じゃないって事でもあるけど……それは仕方ないよね)

 結局恋人のフリをする方向で話はついたのだけど、具体的にどうすればいいのだろう。

「フリするのはいいけど、具体的に何すればいいのかな?」
「お前は別に何もしなくていいんじゃん? まあ、万が一告られる事があれば、付き合ってる奴いるって言えばいいんじゃね?」
「何よ、その万が一って」
「だって知菜、告られねぇだろ?」
「確かに、そうだけど……」
「ま、俺はお前と付き合ってるって断らせてもらうから、そのつもりで」
「う、うん」

 あくまでフリだけど、虎太郎の口から『知菜が彼女』と言われるのだと思うと素直に嬉しい。

 それに、今はフリだけど、そのうち虎太郎の中に私への恋愛感情が生まれるかもしれない。

 そうすれば、本当に付き合えるかもしれない。

 そんな淡い期待を胸に抱いた、その時、

「つーかさ、無いとは思うけど、俺の事は好きになるなよ? 俺、お前とはそういうの抜きにして付き合ってたいんだよ。恋愛して駄目になって気まずくなるのは嫌だからさ」

 真剣な顔してそんな風に言ってくるから、私の淡い期待は一瞬で消え去った。