友達も、愛も。

いつかは消える。

永遠になんてないから。


失う悲しみを覚えるなら、最初からなかったほうがいい。

こう考えるようになったのは、いつからだっけ?
私の人生に、色なんてない。

モノクロで、濃淡なんかこれっぽっちもない、のっぺりした人生。

こんな人生に…何の意味があるの?



ネオンの街は、きっと今日も眠らない。

朝まで、
あの満月が沈むまで。

私が今いなくなったところで、誰が悲しむだろう?
誰が気にするだろう?


だから。



ふっと、手を離した。

これで楽になれる。



体が宙を舞う




…感覚がした気がした。


「え…?」



「あっぶねえなあ、お前、急に手ぇ離してんじゃねよ」


気づけば私は、どこからかやって来た男の子に抱きとめられていた。


失敗した。
咄嗟にそう思った。


屋上に登るのを見られていたんだ。

いやだ。
今飛ばなきゃきっとしばらく飛べない。


「...っ離して!!」


「...いやだ」

彼はもう離さないというようにぎゅっと、抱きしめる力を強めた。


...不思議な人。


嫌だと言う割に、簡単に抜け出せてしまうような
弱い力。

それでいてもなぜか、彼の手を振り払うなんてことはできない不思議な感覚。

いつまでもその胸にいたい。

彼は私には無い何かを持っているのだろう。

そう、自然と思わせられるような、不思議な人。