身代わり婚~光を失った騎士団長は、令嬢へ愛を捧げる

 レオンが帰宅すると、メイドの一人が教えてくれた。

「マリアンヌちゃん、パパのお迎えに行きましょう」
「あーいっ!」

 起きたばかりのマリアンヌと絵本を読んでいたマリアは、一緒にレオンを出迎えに行く。

「レオン様、おかえりなさいませ」
「! マリア、どうして……。仕事は良いのか?」

 レオンがびっくりしたように目を瞠る。

「仕事が早く終わったので様子を見にきたんです」
「パパぁ!」
「マリアンヌっ」

 足に抱きつく愛娘を抱き上げた。

「マリアと、ごほんをよんでたぁ」
「そうか」

 レオンが目を細め、柔らかな微笑を、マリアにも向けてくれる。
 トクン、とマリアの鼓動が高鳴った。

(……この笑顔……なんだか……)

 記憶の蓋が開くというほど強烈な感覚ではないが、懐かしさのようなものを覚えた。

「どうかしたのか、マリア」

 はっと我に返る。

「あ、いいえ」
「? そうか? 今日は良かったら夕食を食べていってくれ」
「ご迷惑でなければ」
「迷惑なんて思う訳がないだろう」

 夕食を摂り、帰宅する時間なると、

「マリア、らめぇっ!」

 マリアンヌが足にしがみついてくる。

「マリアンヌちゃんっ!?」
「やぁ! ここにいてぇ!」
「明日もまた来るから。ね?」
「やぁ!」

 しかしマリアンヌはいやいやとかぶりを振る。
 そんなマリアンヌを、レオンが抱き上げた。
 マリアンヌは「パパ、やぁ!」と手足をじたばたさせる。

「マリアをあんまり困らせたら駄目だ。明日からまた来てくれるんだから」
「むぅ」

 マリアンヌは唇を尖らせ、すっかりむくれてしまった。

「マリアンヌちゃん」

 マリアンヌは、レオンの首にかじりつき、胸に顔を埋める。

「あはは、すっかり嫌われちゃいました」
「まさか、こんなことで嫌うはずないだろ。マリアのこと、嫌いか」
「………………すきぃ」

 いじけ、へそをまげながらも、マリアンヌはぼそっと呟く。
 この答えはマリアとレオンは同時に、笑ってしまう。

「安心しました」
「……マリアンヌ。そんなにいじけていると、マリアが悲しむぞ」

 ずっと抵抗していたマリアンヌだったが、ちらっとこちらを見る。

「……ばぃばぃ」

 小さく手を振ってくれる。

「ふふ、ばいばい。また明日ね」
「ぅん」

 マリアが馬車に乗るまで、レオンは見送ってくれる。

「……ところで、週末は何か予定はあるか?」
「いいえ。特には」
「だったら、花祭りに行かないか。マリアンヌが大好きなんだ。だからもし、君さえ良ければ」
「ありがとうございます。喜んでお付き合いさせて頂きます」
「良かった」

 レオンたちに見送られ、マリアは頭を下げて馬車に乗り込んだ。