婚約破棄を言い渡されたので思わずビンタしてしまい悪女呼ばわりされているけれど、再会した幼馴染の王子からの愛が止まりません

「俺は小さい頃からクレアのことが好きだった。でも、俺は第二王子だ。大切なクレアを王家のしきたりやしがらみに巻き込みたくなくて、諦めていたんだよ。でも、俺がいない間にクレアがあんな目にあって……どうしても我慢ならなかった。もう俺は自分の気持ちに正直になる。俺はクレアと結婚したい。どんなことがあっても、クレアを一生かけて幸せにするって決めたんだ」

 鮮やかなスカイブルーの瞳がクレアを射抜く。その瞳には固い決意と深い愛情が感じられて、クレアの心臓は大きく跳ね上がった。

「ねえ、クレア。俺じゃダメかな?」
「そんな……!光栄なことです。でも、恐れ多くて……私なんかが第二王子の相手に務まるはずがないです」
「第二王子と言っても、俺は王位継承権を放棄するつもりだ。そうなれば、いずれは爵位が与えられて貴族になるだけ、だからそんなに身構えることはないよ。それまでは色々とややこしいこともあるかもしれないけど、クレアが困らないように俺がなんとかする。それに、クレアの俺に対する気持ちは?第二王子ではなく、俺自身のことをどう思ってる?」
「そ、れは……」

(どう思ってるって、ギアルお兄様は幼馴染で、小さい頃から仲が良くて、かっこよくて、一緒にいると楽しくて……)

「俺のこと、お兄様って呼ぶけど、兄のようだとしか思っていない?男として見てくれたことは一度もないのかな?」
「そんな……っ!お兄様だって、小さい頃から私のことを妹のように思ってるとばかり……」
「小さい頃は確かにそうだった。でも、いつの間にか俺はクレアのこと、妹ではなく一人の女性として見ていたよ。好きで好きで仕方なかった。でも立場のことを考えて、君に迷惑がかかると思って気持ちを隠していたんだ。でももう隠さない。俺はクレアのことが好きだ。ほんの少しでも脈があるなら、俺にチャンスをくれないか?俺のことを意識してもらえるように、男として見てもらえるように頑張るよ」

 そう言って、ギアルはクレアの片手を優しく掴むと、そっと手の甲にキスを落とした。そして、クレアをじっと見つめる。その瞳は、心の底から愛おしいものを見つめる熱のこもった瞳だった。

(手に、く、唇の感触が……!それに、そんな顔されたら、心臓が……!)

 突然のことにクレアは顔が真っ赤になる。そんなクレアを見て、ギアルは嬉しそうに微笑む。

「それで、クレアの気持ちは?やっぱり俺のことは兄のようにとしか思っていない?」
「それは……お兄様はお兄様ですけど、ずっと会いたかったですし、今回のことも本当はギアルお兄様に一番に話を聞いて欲しかったんです。でも、悪女なんて呼ばれている私なんかと関わったらお兄様に迷惑がかかると思って……。こうしてお会いできて、助けていただいて本当に嬉しかったんです」

 顔を赤らめながら、なんとか必死に言葉を紡ぐクレアを見て、ギアルの胸は愛おしさで張り裂けそうになる。