婚約破棄を言い渡されたので思わずビンタしてしまい悪女呼ばわりされているけれど、再会した幼馴染の王子からの愛が止まりません

「ああ、君たちか」

 ギアルの冷ややかな視線の先には、クレアへ婚約破棄を言い渡したオリヴァーと、オリヴァーを略奪した令嬢アリーネがいる。

「殿下、その女は確かにこちらにいるアリーネ嬢へ嫌がらせを行なっています。俺を奪われた腹いせに嫌がらせを行う、悪女のような酷い女です。殿下が庇うような女ではありません!」

 オリヴァーが声を高らかにしてそう言うと、ギアルはさも不快だと言わんばかりの顔をする。

「本当にそうなのか?アリーネ嬢。俺に対して嘘をつくことは王家に嘘をつくことと同じだ。それはわかっているんだろうな?証拠があるならばぜひ見せてほしい。そんなにも嫌がらせを受けているのであれば、一つくらいはあるんだろう」
「そ、れは……」

 ギアルの言葉に、アリーネは怯えたように震えている。それを見てオリヴァーは顔を顰めながら問いただす。

「アリーネ、本当なんだろう?俺にいつもどれだけ酷いことをされているか言っていたじゃないか。殿下にちゃんとお伝えするんだ、ほら」
「ひっ!」
「あるわけがないよな。俺が従者に調べさせたところ、そんな事実はどこにもなかった。クレアを悪女に仕立てあげて面白かったか?悪女の方はむしろアリーネ嬢の方なのでは?」

 ギアルが冷ややかな視線をアリーネに向けると、アリーネの顔はすっかり蒼白になる。

「アリーネ!嘘なのか?そんなまさか!」
「君は第二王子の俺の調査より、その御令嬢を信じるのか?ああ、いや、そこまで愛しているのであればそれもそれでいいだろう。だが、君たちは紛れもなく罪のない一人の令嬢を悪女に仕立て上げた、それは真実だ」

 会場内が一気にざわつき始める。誰もがオリヴァーとアリーネを見て嫌悪感を露わにしていた。

「わ、私、体調が悪いので、失礼しますっ……!」
「あっ、アリーネ!」

 震えながらバタバタと走り去るアリーネを、オリバーは慌てて追いかけていく。