婚約破棄を言い渡されたので思わずビンタしてしまい悪女呼ばわりされているけれど、再会した幼馴染の王子からの愛が止まりません

「すまない、君とは別に愛する人ができたんだ。俺は彼女と結婚したいと思っている。だから婚約破棄を……」

 パシン!

 婚約破棄を言い渡された侯爵令嬢クレアは、思わず婚約者であるオリヴァーにビンタを食らわした。ビンタされたオリヴァーも、その隣にいるオリヴァーの相手、令嬢アリーネも、唖然としてクレアを見つめている。

 クレアの美しいプラチナブロンドの髪がサラリと靡き、宝石のような濃い青色の瞳は動揺して揺れている。クレアの手は小さく震えていた。

 夜会の会場、たくさんの貴族が音に驚き、何があったのかとクレアたちを見始めた。

(や、やってしまった!)

 気がついたら、いつの間にか手が出てしまった。でも、婚約してからは自分にあれだけ愛を囁いていたのに、突然他に愛する人ができたから婚約破棄しろだなんでいかれている。しかもここは夜会の会場だ。そんな所で婚約破棄を言い渡してくるなんて、やっぱり頭がおかしいとしか思えない。

 そうは思いつつ、それでも自分がやってしまったことにクレアは青ざめ震えているが、オリヴァーは怒りをあらわにしてクレアを睨みつけていた。

「何をする!婚約破棄されたからと言って俺に手をあげるだなんてなんて女だ!やはりお前のような女と一緒にならなくて正解だったな!」

 そう言ってオリヴァーはアリーネを連れてクレアの前から立ち去る。オリヴァーに肩を抱かれたアリーネはちらりとクレアを見ると、嘲け笑うような顔を一瞬だけ見せた。

(何、あの令嬢……!まるで奪ってやったと言わんばかりの顔をしてる)

 あ然として二人の背中を眺めていると、周囲からヒソヒソと会話が聞こえてきた。

「あらやだ、婚約破棄?何もこんな場所で言わなくても」
「でも婚約破棄されたからってビンタを食らわすとは……怖い怖い」
「見た目は可憐でそんなことをするようには見えないが……人は見た目だけではわからないな」
「あれだけ気が強ければ婚約破棄もしたくなるだろう、話もろくに聞かずビンタするなんて、まるで悪女じゃないか」

 事情を知りもしないで勝手なことを言われている。

(どうしよう、視線が痛い、ここにいてはいけない……!)

 クレアは逃げるようにして会場を後にした。