わたしを「殺した」のは、鬼でした

 はあ、と息を吐く。
 白く染まったそれを見て、寒いなと思った。
 その寒さが、山に捨てられた時のことを思い出させる。
 千早様と出会ったあの日。
 わたしを冷ややかに見下ろした、綺麗な綺麗な鬼。

「……千早様」

 千早様はわたしを殺したと言った。
 でもわたしは、助けてもらったと思っている。
 ここがどこかは知らないが、さすがにこんなところまで千早様は助けに来てくださらないだろう。
 あの日逃れた死が、またゆっくりとわたしの足元に近づいてきているのがわかった。

 ……死にたく、ない。

 あの日、目の前に死が差し迫っていたあの時ですら涙は出なかったはずなのに、気が付けば涙があふれていた。
 わたしにとって死はあまりに身近なもので、それを怖いと思う感情なんて、とうの昔に消え去っていたと思っていたのに。