わたしを「殺した」のは、鬼でした

 寒さのせいか、意識がとぎれとぎれになりはじめていたわたしの耳に、がさりと落ち葉を踏むような音が聞こえてきた。
 ぼんやりしながら膝の間から顔を上げ、わたしはぱちりぱちりと緩慢に瞬く。

 一瞬、おつきさまが落ちて来たのかと思った。
 だが、その勘違いも、すぐに違うとわかる。
 目の前にあらわれたのは、月のように綺麗な金色の髪に赤紫色をした背の高い男性だった。
 白に赤い紅葉の模様が美しい羽織を纏い、腕を組んでじっとわたしを見下ろしている。

 その目は驚くほど怜悧で、同時に、わたしをひどく憎んでいる目だった。