わたしを「殺した」のは、鬼でした

「俺はお館様の決定に従うのみです。……ユキは、鬼に変質した時点で厳密には道間ではなくなりました。思うところがあるものもいるでしょうが、お館様が娶ったものを、表立って傷つけようとするものはこの里にはいないでしょう」

 青葉は前からユキの立場を明確にすべきだと思っていた。
 中途半端な立場のままでは、ユキはこの里で穏やかに生活することは不可能だ。
 母の牡丹を後見としたけれど、青葉はそれでもまだ弱いと考えていた。

 先代頭領の妹で、千早の叔母である牡丹は、この里でそれなりの地位にいる。
 だが、道間であった娘を確実に守るのならば、千早の庇護下に入れなければ無理だ。
 妻でないなら養女でもいい。ユキが千早の庇護下にあると、明確にわかる状況に置かなければ、彼女の安全は保障されない。
 ユキ自身に罪はなくとも、それだけ、道間の名は鬼の感情を逆なでするのだ。

 長い年月を経れば、「道間」ではなくユキ個人を見るものも現れよう。
 しかし、ユキが里で認められるまで、彼女が生きていられる保証はどこにもない。それだけ彼女の立場は危ういのだ。
 千早もそれがわかっているから、ユキを邸の外に出すときは必ず千早自身がそばにいるようにしているのである。
 そうすることで、ユキは千早自身が守っているのだと周囲に認知させたいのだろうが、それだけですべての鬼に周知できるわけではない。

 逆に、千早が目をかける元は道間の鬼に、面白くない感情を抱くものだって出るはずだ。
 青葉としては、ようやく決断したかと、安堵すらしたいくらいだった。