わたしを「殺した」のは、鬼でした

「わたしが、このようなことを言うのは失礼かもしれませんが……、千早様は、逃げたのではなく守ったのだと、思います」

 ほかの鬼たちを、『破魔家』から守ったのだ。
 道間家に復讐したいと思う気持ちもあっただろうに、それを抑え込んで、同胞たちを守る決断をしたのだ。
 千早様からすれば、何も知らないくせに偉そうなことを、と思うかもしれない。
 でも、彼の横顔を見ていると、言わずにはいられなかった。

 たぶん千早様は、とてもとても優しいのだ。
 冷ややかな雰囲気を纏っているけれど、その実、とても温かい人……鬼なのだろう。
 そして、優しいからこそ、多くの葛藤を抱えるのだ。

 わたしの右手を握りしめる千早様の手に、左の手を添えて、わたしはそっとその手を持ち上げる。
 わたしの首元に触れて、彼を見上げた。

「わたしは当時の道間の女ではありませんが、千早様のお心が晴れるなら、お父様の墓標の前にわたくしの首を置いてくださって構いません」