わたしを「殺した」のは、鬼でした

「――俺は、逃げたのだろうか」

 かつて現世には、神も人も魑魅魍魎も――すべて等しく暮らしていた。
 時代の流れと共にそれが変化し、人と魑魅魍魎は袂を分かちた。
 いつしか現世は人が支配する世になり、人以外のものには窮屈な世界となっていったのだ。

 その中で生まれた『破魔家』が、お上から、現世から人ならざるものを排除する任を受けた。
 その中には神の亜種である鬼も含まれており、彼らは徐々に住む場所を追われた。
 青葉様からは、そう教えてもらっていた。

 かつて現世にあった鬼の隠れ里を、現世と常世の狭間に移したのは、千早様だったそうだ。
 だけどその決断に至るまで、千早様は多くを悩み苦しんだだろう。
 今の彼の横顔を、わたしの手を握る力の強さを思えば、千早様がどれだけ苦しんだのか推し量れる。
 百年たった今でもこんな表情をするのだ。当時はさぞかしつらかっただろう。