わたしを「殺した」のは、鬼でした

 千早様はお墓の前に立って、手を合わせるでもなく、ただじっと墓石を見つめている。
 傘をたたみ、わたしが手を合わせていると、千早様が前を向いたままぽつりと言った。

「俺の父は、道間の女狐に殺された」

 千早様のご事情は青葉様から聞き及んでいたけれど、彼の口からそれが語られるのははじめてのことだ。

「父が死に、俺は一族のものを引きつれてこの隠れ里に居を移した。俺の行動を『逃げ』と取るものもいただろう。俺に賛同しないものは現世に残ったが、やつらがどうなったのかは知らん」

 千早様の声は淡々としていた。
 だけど、拳はきつく握られていて、千早様がいまだに苦しんでいるのを知る。
 あまり拳を握りすぎると、爪で皮膚を傷つけてしまうかもしれない。
 無礼だと思いつつも、千早様との距離を詰めて、彼の手にそっと触れると、千早様が一度拳を解いてわたしの手を握りこんだ。