わたしを「殺した」のは、鬼でした

 先代様、ということは千早様のお父様のことだろう。
 千早様のお父様は、百年ほど前に道間家によって殺されたと聞いた。
 だから千早様は道間家を憎んでいて、その腹いせにわたしを鬼に変えたのだそうだ。

 わたしを下女として働かせることで鬱憤を晴らしていらっしゃるのかもしれないけれど、わたしにしてみれば千早様にはよくしていただいているという印象しかなく、むしろこれまでの暮らしの何倍もここでの暮らしの方が快適だ。
 道間家を憎んでいるのなら、わたしの扱いも手ひどいものになるはずで、それがないから、わたしは千早様の中でお父様のことは過去のことになっているのではないかと勝手に思っていた。
 百年も昔のことらしいので、憎しみも薄れているのだろう。
 そう、身勝手にも推察していたのだけど、今朝の様子を見るに、それは間違いだったと思い知らされる。

 千早様はまだ、道間を深く憎んでいる。
 その事実に、わたしの胸が痛んだ。
 わたしは道間に生まれながら道間家の一員とはみなされなかったけれど、道間の血が流れているのは間違いない。
 千早様からしたら、お父様の仇だ。
 わたしのことも、さぞ、憎かろう。