わたしを「殺した」のは、鬼でした

「先に寝ていればよかったものを」

 吐息交じりにそう言って、千早様がお布団に潜り込む。
 わたしの鼓動がどきりと跳ねたけれど、千早様は平常そのもので、それでいてどこか面倒くさそうにわたしの体を引き寄せた。

「さっさと寝ろ」

 ぽんぽんと背中を叩かれて、わたしは逆に目が冴えてしまう。
 懐炉代わりなのだから密着してもおかしくないはずなのに、緊張で頭の中が真っ白になった。

 湯上りの千早様からは、ほんのり、柚子の香りがする。お風呂に浮かべていたのかもしれない。
 とても緊張しているのに、柚子の香りと、ぽんぽんと、あやすように規則的に背中を叩かれるのが気持ちよくて、わたしの瞼が徐々に重くなっていく。

「お前は、変な女だな……」

 意識が夢の中に引きずり込まれる間際、千早様の、吐息のようなささやきが落ちた。