わたしを「殺した」のは、鬼でした

「お布団の準備が終わりました。支度を整えてまいりますので、一度下がらせていただきます」
「あ、ああ……」

 千早様の許可を得て、わたしは一度、使わせていただいている部屋に下がった。
 わたしの部屋は下女に与えられるにしては豪華で、内風呂もついている。
 なんでも、千早様のお邸には温泉が引き入れられているそうで、内風呂には常に暖かい湯が張っていた。

 道間家で暮らしていたときですら、お風呂になんて滅多に入れなかったのに、ここでは毎日使うことができる。
 湯の中に入ると、冷えた体に少し熱く感じたけれど、体が温まるとともにちょうどいい湯加減になった。

 ……千早様の懐炉になるんだから、ちゃんと温まって、そして綺麗にしておかなくちゃ。

 今日の昼、青葉様にお風呂に入るように言われたため、髪はその時に洗った。
 髪が濡れていたら千早様が寒かろうと思って、髪は高いところで束ねて濡らさないように気を付ける。
 丁寧に体を洗ってまた温まり、ほかほかと体から湯気が立ち上るくらいになってようやくお風呂から出た。

 手早く白の単衣を身に着けて、その上に体を冷やさないように千早様から頂いた分厚い羽織を羽織るとお部屋に向かう。
 すると、千早様は文机の前に何をするでもなく座っていらっしゃった。わたしが部屋を出てからもずっとそこにいたらしい。