わたしを「殺した」のは、鬼でした

「そこで少し温まってから部屋に戻れ」
「……はい」

 ユキは恐ろしいほどに従順だ。
 千早の命令に決して「否」を唱えることはない。
 最近、それが少々面白くないと思うのは何故だろうか。
 彼女に否と言わせてみたくて仕方がない自分は、ひねくれているのかもしれない。

(この女が断りそうなことと言ったらなんだろうか)

 温かいのが気持ちいいのか、表情が柔らんだユキの横顔を見ながら考える。
 ずいぶん長い間、寒い部屋の隅にいたのだろう。
 血色がなくなっている頬を見ながら千早はにやりと笑った。

「ユキ、訂正だ。今夜はここで、俺の懐炉がわりになれ」

 さあ、さすがにこれには否と言うだろう。
 どんな顔で拒否を示すのかと、愉快な気持ちで眺めていると、ユキはぱちりぱりりといつものように緩慢に瞬きをして、こくりと首肯した。

「はい」

 千早は、絶句した。