わたしを「殺した」のは、鬼でした

(らしくない、か)

 言われてみればそうかもしれない。
 千早は使用人がどのような格好をしていようと、いちいち気に留めるような性格ではないからだ。
 だがどうしてかユキの髪が気になった。

 いや、理由はわかっている。
 道間に生まれながら道間らしくないユキの、何の手入れもされていない髪がずっと気になっていた。
 気になっていたから、整える道具がないのかと櫛をやったのに、それが使われた形跡はない。
 せっかく与えてやったのにと面白くない気持ちで「髪を整えろ」と言えば、何故か千早の髪を整えようとした。
 たぶん、あれは、自分自身を気に掛けると言うことを知らないのだろう。

(道間に生まれた、黒を持たない娘、か)

 少し考えればわかることだ。
 道間は黒を尊ぶ。
 逆に、黒以外の色を持って来たものを疎む。
 あの娘がこれまで道間家でどのように生きて来たのかなんて、あの色とあの性格を思えばすぐに理解が及ぶと言うものだ。

 憐れな娘だと、思った。
 憎い道間の娘にそのような感想を抱くことがあるなんて、千早自身も驚いたけれど、ユキが黒を持たない娘だからだろうか。不思議と、あの娘には嫌悪感を抱かない。