わたしを「殺した」のは、鬼でした

「えっ⁉」

 気が付いたら、わたしは千早様の腕の中に抱き込まれていた。
 すーすーと寝息が聞こえるので、まだ眠っていらっしゃるのは間違いない。

 ……どうしましょう。

 これは困った。
 身じろぎするも、千早様は力が強いので、わたしでは腕から抜け出すことはできない。
 すっかり抱き枕にされたわたしは、千早様の腕の中で必死に朝だとお伝えするけれど、起きてくださる気配はなかった。

 とくとくと千早様の鼓動の音がする。
 千早様は鬼だけれど、鬼も人と同じように心の蔵が鼓動を打つのだなと少しだけ面白く思っていると、しばらくして足音が聞こえてきた。

「お館様……あー……」

 どうやらいつまでも起きてこない千早様に業を煮やして、青葉様が様子を見にいらしたようだ。