わたしを「殺した」のは、鬼でした

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 鬼は、暁月千早様とおっしゃるらしい。
 千早様とお呼びする許可を得て、わたしは千早様の下女になった。
 状況はいまだよく読めないが、人の生を終えたわたしは、ここで生きていくしかない。
 生きるも死ぬも千早様の気分次第なのだから、彼に仕えるのは当然だろう。

 ここは、鬼の隠れ里と呼ばれる場所だと言う。
 現世と常世の狭間にある異空間だと聞いたけれど、よくわからなかったので深くは考えなかった。
 何故なら鬼というのは神の亜種だそうなので、人として生きたわたしには理解できない部分が大きいはずだからだ。

「おはようございます、千早様」

 わたしは千早様の寝室の襖を開いて、三つ指をついて頭を下げた。