わたしを「殺した」のは、鬼でした

 正確には、赤みの強い茶色。
 ゆえに父はわたしを切ろうとし、けれどもギリギリで踏みとどまったのは、わたしが父の長子であり、体の弱い母が二人目を望めるかどうかはわからなかったからだと聞いた。

 父はわたしを「鬼の呪い子」と呼び、わたしを我が子と呼ぶことはなかった。
 母はわたしのような子を産んだ衝撃で心を病み、わたしの存在を頭から否定した。
 わたしは道間家の離れで乳母によって育てられた。
 忌み嫌われる容姿であろうと、道間家の血は絶やせない。
 このまま母に次の子が出来なければ、わたしは次代の「子」を産む道具として使われるのだろう……子供ながらに、漠然とそう思っていた。

 さらに父を絶望とさせることに、わたしは破魔家の道間家に生まれながらにして、「無能」だった。
 魑魅魍魎を払う力のない、ただの人間。
 それを知った父は、何が何でも次の子をと思ったのだろう。
 心を病んだ母を療養と言う名目で別邸に追いやり、父は妾を持った。
 そして……わたしが十のときに、妹が生まれたのだ。