わたしを「殺した」のは、鬼でした

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 さらりと艶やかな金色の髪が、一房わたしの頬に触れた。
 それほど長いわけでもない前髪がわたしに触れるくらい近くに、鬼の綺麗な顔がある。
 わたしに覆いかぶさっている彼は冷ややかな笑みを浮かべていたけれど、その綺麗な赤紫色の瞳は、わたしを値踏みするような光を宿していた。

 ……気分は、どうか?

 そんなことを訊ねられたのははじめてだった。
 道間家では、わたしの気分なんて誰も気にしない。
 だからわたしの気分を気にされたのははじめで、初対面の彼がどうしてわたしにそこまでの心を割くのかもわからなかった。